思い出   操さん 志津さん そして節子さんへ贈る

 この本は、私のライフワーク・聞き書き活動の原点とも言える一冊です。
 当時勤務していた老人福祉施設の周年記念懸賞論文に応募するため上司に頼み、三名の入居者さんの思い出の聞き取りをさせてもらいました。毎日短時間通い、少しずつ聞き取りをした内容を文章化し、その過程で得たもの、気づいたことをまとめる、という取り組みでした。
 そのうちのお一人が、当時九十歳だった小笠原ふみ子さん(一九一一年 明治四十四年生まれ)で、その聞き取りによって生まれたのがこの本です。

 まさに手探りで悩みながらも確かなやりがいをつかみはじめていた頃。今改めて、このシンプルな文章を再編集しながら、あの心の振動を味わっています。(後書きより)